群馬県伊勢崎市のエクリ行政書士事務所、代表の高山秀康です。建設業許可申請において、工事経歴書は非常に重要な書類です。この書類は財務諸表と並んで作成が大変な書類と言われていますが、正しい知識があれば効率的に作成できます。
工事経歴書は建設業許可申請の必須書類であり、経営事項審査を受ける場合にも重要な役割を果たします。特に複数年度分をまとめて作成する場合は負担が大きいため、正しい作成方法を知っておくことが大切です。
この記事では、2025年最新の情報に基づいて、工事経歴書の基本情報から具体的な記載方法、作成時の注意点まで詳しく解説します。建設業許可申請を控えている方はぜひ参考にしてください。
工事経歴書とは?基本情報と作成ルール
工事経歴書(様式第二号)は、建設業許可申請において提出が必要な書類の一つです。この書類には、直近の決算年度に完成した工事や申請時点で施工中の工事について記載します。
工事経歴書は、あなたの会社がどのような工事実績を持っているかを示す重要な書類です。許可行政庁はこの書類を通じて、あなたの会社の施工能力や経営状況を判断します。
工事経歴書に記載すべき基本情報は以下の通りです。
- 直近の決算が終了した年度の工事
- 注文者(発注先)
- 工事名
- 元請・下請けの別
- 現場の住所
- 主任技術者・監理技術者の氏名
- 請負金額
- 工期
これらの情報を許可業種ごとに作成していきます。また、公共工事の入札を行う場合としない場合で作成方法が異なります。一般的には経営事項審査(入札参加するための手続き)を受けない場合の方がシンプルです。
工事経歴書の作成ルール
工事経歴書を作成する際には、いくつかの重要なルールがあります。まず、許可を受けようとする業種ごとに作成する必要があります。例えば、7業種の許可を取得していれば、経歴書も7枚必要になります。
また、経営事項審査を受ける場合と受けない場合で記載方法が異なります。経営事項審査を受ける場合は、元請工事と下請工事を区別して記載する必要があります。
工事実績がない場合や新設法人の場合でも工事経歴書の提出は必要です。その場合は「許可業種の実績なし」や「新設法人のため実績なし」と記載します。
工事経歴書の具体的な記載方法
工事経歴書の記載方法を項目ごとに詳しく解説します。正確に記入することで、許可申請がスムーズに進みます。
建設工事の種類と税込・税抜の選択
まず「建設工事の種類」の欄には、工事経歴書に記載する工事の種類を書きます。この書類は許可業種ごとに作成するため、例えば「建築一式」「大工工事」「とび土工コンクリート工事」などと記載します。
次に「税込・税抜」の欄では、該当する方に〇をつけます。ここでいう税とは消費税のことを指します。経営事項審査を受ける場合は、税抜きを選択するのが一般的です。
注文者と工事名の記載方法
「注文者」の欄には、工事を発注した会社や人物を記入します。発注者が個人の場合は、個人情報保護の観点から「個人A」のように特定できないように書きます。法人の場合は、そのまま名前を記載しても問題ありません。
「工事名」の欄には、工事の内容がわかるように記載します。個人の名前が入る場合は、「A邸解体工事」など特定できないように記入します。
「元請・下請けの別」では、元請の工事なら「元請」、下請の場合は「下請」と記入します。
工事現場の住所と配置技術者の記入
「工事現場のある都道府県及び市区町村名」の欄には、現場の住所を記入します。政令指定都市の場合は区の名前まで記入します(例:大阪市北区、大阪市城東区など)。
「配置技術者の氏名」には、工事に配置する技術者の名前を記入します。許可を初めて取得する方は、現場に派遣した技術者の氏名を記入します。
「主任技術者・監理技術者の別」では、該当する方にチェックを入れます。監理技術者は、発注者から直接工事を請け負い、4000万円(建築一式工事の場合は6000万円)以上を下請契約する場合に必要となります。
経営事項審査を受ける場合の工事経歴書作成方法
経営事項審査(経審)を受ける場合、工事経歴書の作成方法はより複雑になります。経審は公共工事の入札に参加するために必要な手続きです。
元請工事と下請工事の記載順序
経営事項審査を受ける場合、工事経歴書の記載順序には明確なルールがあります。まず、元請工事に係る完成工事について、請負金額の大きい順に、元請工事の完成工事高合計の7割を超えるところまで記載します。
元請工事の7割超までに1,000億円に達しない場合、元請工事の合計額の7割に達する前に、軽微な工事(工事1件の請負代金の額が税込み500万円未満、建築一式工事の場合は1,500万円未満)が10件に達するまで記載します。
10件に達しない場合、元請工事が7割を超えるところまで記載します。続いて、残りの元請工事と下請工事に係る完成工事について、請負金額の大きい順に、全体の完成工事高合計の7割を超えるところまで記載します。
消費税の取り扱いと金額の記載方法
経営事項審査を受ける場合、「請負代金の額」は消費税及び地方消費税の額を除いた額を記載します。ただし、免税事業者の場合は、申請時には財務諸表と同様に税込で作成します。
金額の記載方法については、正確な数字を記入することが重要です。また、小計欄と合計欄の計算も間違いがないように注意しましょう。
経営事項審査を受ける場合の工事経歴書作成は複雑ですが、ルールを理解して丁寧に作成することで、スムーズに審査を通過することができます。
工事実績がない場合や新設法人の対応方法
工事実績がない場合や新設法人の場合でも、工事経歴書の提出は必要です。このような場合の対応方法を解説します。
許可業種で実績がない場合の記載方法
取得した許可業種や取得予定の許可業種で実績がない場合も珍しくありません。その場合は、許可業種の名前と「許可実績なし」と書けば完了です。
施工管理技士などの国家資格で専任技術者を取る場合は、実績のない業種でも建設業許可が取れます。これは、技術的能力があることを証明できれば、実績がなくても許可を取得できるという建設業法の考え方によるものです。
新設法人の場合の工事経歴書作成
法人成りなどで許可を取る場合は、「新設法人のため実績なし」と記入します。個人事業主時代の実績は、法的には会社の実績にはなりません。
ただし、個人事業主時代の実績を参考資料として提出することで、あなたの会社の施工能力を示すことはできます。この場合、工事経歴書とは別に参考資料として提出することになります。
新設法人の場合でも、今後どのような工事を請け負う予定かを明確にしておくことで、許可申請がスムーズに進むことがあります。
工事経歴書作成時の注意点とよくある間違い
工事経歴書を作成する際によくある間違いと注意点を解説します。これらを避けることで、スムーズな許可申請が可能になります。
個人情報の取り扱いに関する注意点
工事経歴書に記載する「注文者」や「工事名」に個人の氏名がある場合は、イニシャル表記にするなど特定できないように配慮する必要があります。これは個人情報保護の観点から重要です。
例えば、「山田太郎邸新築工事」ではなく「Y邸新築工事」や「個人A邸新築工事」などと記載します。同様に、注文者が個人の場合も「個人A」「個人B」などと記載します。
複数業種にまたがる工事の記載方法
一つの工事が複数の業種にまたがる場合、その工事をどの業種の工事経歴書に記載するかが問題になります。基本的には、その工事の主たる部分がどの業種に該当するかで判断します。
例えば、建築一式工事で請け負った場合には、この工事を管工事や電気工事とその他の工事に分割し、それぞれ管工事、電気工事、建築一式工事に分割計上することはできません。この場合は建築一式工事の工事経歴書に記載します。
考え方としては、基本的に「1つの契約書で1つの業種へ振り分ける」ということです。
決算変更届との整合性確保
工事経歴書は財務諸表や直前3年の工事施工金額との整合性を保つ必要があります。特に複数年度分を一気に作成する場合は、作業負担が非常に重たくなります。
決算変更届が未提出だと、更新前に複数年度分を一気に作る必要が生じることがあります。そのため、決算変更届は期限内に提出することをお勧めします。
日々の工事に関する情報やデータの整理を行い、工事経歴書を作成しやすいように情報等の管理をしておくことも重要です。
まとめ:効率的な工事経歴書作成のポイント
工事経歴書は建設業許可申請において重要な書類です。この記事で解説した内容をまとめると、以下のポイントが重要です。
- 許可を受けようとする業種ごとに作成する
- 経営事項審査を受ける場合と受けない場合で作成方法が異なる
- 個人情報の取り扱いに注意する
- 複数業種にまたがる工事は適切に振り分ける
- 財務諸表や直前3年の工事施工金額との整合性を確保する
- 日常的に工事情報を整理しておく
工事経歴書の作成は複雑で時間がかかる作業ですが、正しい知識と準備があれば効率的に作成することができます。特に経営事項審査を受ける場合は、元請工事と下請工事の区別や記載順序に注意が必要です。
また、工事実績がない場合や新設法人の場合でも工事経歴書の提出は必要ですが、その場合は「許可実績なし」や「新設法人のため実績なし」と記載するだけで問題ありません。
建設業許可申請は複雑な手続きですが、一つ一つの書類を正確に作成することで、スムーズに許可を取得することができます。工事経歴書の作成でお困りの場合は、専門家に相談することも検討してみてください。

建設工事の種類と税込・税抜の選択
元請工事と下請工事の記載順序
許可業種で実績がない場合の記載方法
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