建設業許可の財産要件を確実に満たす5つの方法

群馬県伊勢崎市のエクリ行政書士事務所、代表の高山秀康です。建設業許可を取得する際、多くの事業者様が頭を悩ませるのが「財産要件」です。この要件をクリアできないと、せっかくの許可申請が不許可になってしまうリスクがあります。

建設業許可の財産要件とは、建設工事を請け負い施工するための準備資金として、一定以上の資産を有していることを求める要件です。一般建設業と特定建設業では基準が異なり、特に特定建設業では厳しい財務基準が設けられています。

私はこれまで数多くの建設業許可申請をサポートしてきましたが、財産要件で躓く事業者様が少なくありません。特に創業間もない会社や個人事業主の方々は、この要件をどう満たせばよいか悩まれることが多いのです。

目次

建設業許可における財産要件とは

建設業許可の財産要件は、建設工事を適切に遂行するための財政的基盤があるかを判断するための基準です。

建設工事では、資材の購入、労働者の確保、機械器具の調達など、工事着手前に相当の準備資金が必要となります。そのため、建設業許可制度では「財産的基礎」として一定の資産を有していることが要件とされているのです。

一般建設業と特定建設業では、この財産要件の基準が大きく異なります。一般建設業の場合は比較的ハードルが低く設定されていますが、特定建設業では下請業者保護の観点から厳しい基準が設けられています。

建設業許可の財産要件を示す書類と電卓では、具体的に財産要件とはどのようなものなのでしょうか。次の表で一般建設業と特定建設業の財産要件を比較してみましょう。

一般建設業の財産要件

一般建設業許可を取得するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  • 自己資本が500万円以上あること
  • 500万円以上の資金を調達する能力があること
  • 許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること

この中でどれか一つでも満たせば、財産要件はクリアできます。創業間もない会社でも、資金調達能力があれば許可取得が可能なのです。

特定建設業の財産要件

特定建設業許可の場合は、下請業者への支払いを確実に行える財政基盤が求められるため、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
  • 流動比率が75%以上であること
  • 資本金の額が2,000万円以上であること
  • 自己資本の額が4,000万円以上であること

特定建設業許可は、これらすべての条件を満たさなければならず、更新時にも同じ基準が適用されます。そのため、財務管理が非常に重要になってきます。

財産要件を満たす5つの確実な方法

財産要件を確実に満たすための方法を5つご紹介します。これらの方法は、私がこれまでサポートしてきた多くの事業者様が実際に活用し、成功した事例に基づいています。

建設業経営者が財務書類を確認している様子方法1: 自己資本を500万円以上に増強する

一般建設業許可の場合、最も確実な方法は自己資本を500万円以上にすることです。自己資本とは、簡単に言えば「資産-負債」の金額で、会社の純資産に相当します。

法人の場合、貸借対照表の「純資産の部」の合計額が自己資本となります。個人事業主の場合は、期首資本金に事業主借と事業主利益を加え、事業主貸を引いた金額が自己資本です。

私がサポートした建設会社の社長は、決算期直前に自己資金を追加出資して純資産を増やし、財産要件をクリアした例があります。特に決算期が近い場合は、この方法が有効です。

皆さんは自社の純資産額を把握していますか?

方法2: 預金残高証明書で500万円以上の資金調達能力を証明する

自己資本が500万円に満たない場合でも、500万円以上の資金調達能力があることを証明できれば財産要件を満たせます。最も一般的な方法は、銀行の預金残高証明書を取得することです。

ある個人事業主の方は、自己資本は300万円程度でしたが、決済用の口座に一時的に資金を集中させて600万円の残高を作り、その残高証明書を取得して財産要件をクリアしました。

この方法のポイントは、申請のタイミングに合わせて一時的に預金残高を増やすことです。月末に売掛金の入金が多くなる時期を狙って残高証明書を取得するといった工夫も効果的です。

自己資本の正しい理解と計算方法

財産要件を満たすためには、自己資本の正確な理解と計算が不可欠です。よくある誤解として、「資本金が500万円あれば財産要件を満たせる」というものがありますが、これは正確ではありません。

財務諸表と計算機を使って自己資本を計算している様子法人の自己資本計算

法人の場合、自己資本は貸借対照表の「純資産の部」の合計額です。これは資本金だけでなく、資本剰余金、利益剰余金、繰越利益剰余金などを含めた金額になります。

例えば、資本金が300万円の会社でも、利益の蓄積により純資産合計が500万円を超えていれば、財産要件を満たすことができます。逆に、資本金が500万円あっても、赤字が続いて純資産が500万円を下回っていれば、財産要件を満たせません。

建設業許可申請では、申請日の直前の決算内容に基づいて判断されますので、決算書の純資産額が重要になります。

個人事業主の自己資本計算

個人事業主の場合は、次の計算式で自己資本を算出します。

(期首資本金+事業主借+事業主利益)-事業主貸+(利益留保性引当金+準備金)

個人事業主の方は、この計算式に基づいて自己資本を正確に把握することが重要です。特に「事業主貸」(事業主が事業資金を個人的に使用した金額)が多いと自己資本が減少するため注意が必要です。

私のクライアントの個人事業主の方は、事業主貸の金額が多く自己資本が不足していたため、個人資産から事業への資金投入(事業主借の増加)を行い、財産要件をクリアした例があります。

特定建設業許可の財産要件対策

特定建設業許可の財産要件は一般建設業よりもはるかに厳しく、すべての条件を同時に満たす必要があります。特に更新時にも同じ基準が適用されるため、継続的な財務管理が重要です。

特定建設業許可の財務要件を検討するビジネスミーティング方法3: 決算対策で財務指標を改善する

特定建設業許可の財産要件を満たすためには、決算期に向けた計画的な財務対策が効果的です。具体的には以下の対策が有効です。

  • 決算期前に借入金の返済を進め、負債を減らす
  • 役員貸付金や未収入金などの回収を進める
  • 不要な固定資産の売却により流動資産を増やす
  • 決算期直前の大型支出を翌期にずらす

ある建設会社では、決算期に向けて計画的に借入金の返済を進め、流動比率を改善した結果、特定建設業許可の更新をスムーズに行うことができました。

財務指標の改善は一朝一夕にはできません。日頃から財務状況を把握し、計画的に対策を講じることが重要です。

方法4: 会社の決算期を変更して資産要件を満たす

財務状況が厳しい場合、会社の決算期を変更することで財産要件を満たせる可能性があります。例えば、資金繰りが良好な時期に決算を迎えるよう調整することで、財務指標を改善できます。

私がサポートした建設会社では、大型工事の完成引渡し後に決算を迎えるよう決算期を変更し、純資産を大幅に増やすことに成功しました。これにより特定建設業許可の財産要件をクリアできたのです。

決算期変更は税務署への届出が必要ですが、財産要件対策として有効な手段の一つです。ただし、安易な決算期変更は税務調査のリスクを高める可能性もあるため、専門家に相談の上で検討することをお勧めします。

方法5: 資本金増資または資本準備金の積み増しを行う

特定建設業許可では資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上という厳しい条件があります。これらを満たすためには、増資や資本準備金の積み増しが効果的です。

増資には株主からの出資が必要ですが、既存株主からの追加出資や新規株主の受け入れにより実現できます。また、株主からの資本性ローン(資本準備金として計上)も自己資本増強の方法として有効です。

建設業を長年営んできた会社が特定建設業への切り替えを検討した際、資本金が1,500万円で不足していました。そこで、役員や関係者から追加出資を募り、資本金を2,500万円に増資することで財産要件をクリアした例があります。

資本政策は会社の将来に大きく影響するため、慎重に検討する必要があります。税理士や行政書士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。

財産要件を満たせない場合の対応策

財産要件を満たすことが難しい場合でも、諦める必要はありません。状況に応じた対応策があります。

一般建設業許可の場合

自己資本が500万円に満たず、預金残高証明書も取得できない場合は、金融機関から「融資可能証明書」を発行してもらう方法があります。これは「500万円までなら融資可能」という証明書で、財産要件を満たす資料として認められています。

また、過去5年間許可を受けて継続営業していれば、自己資本や資金調達能力がなくても財産要件を満たせます。この場合、過去の許可証や営業実績を証明する書類が必要です。

特定建設業許可の場合

特定建設業許可の財産要件を満たせない場合は、一般建設業許可を取得して営業しながら、財務体質の改善を進めるという選択肢もあります。一般建設業でも4,500万円未満の下請契約であれば締結できるため、事業規模に合わせた戦略を立てることが重要です。

また、2025年2月1日からは特定建設業許可が必要となる下請金額の基準が引き上げられ、建築一式工事では8,000万円以上、その他の工事では5,000万円以上となりました。この改正により、一般建設業でも以前より大きな工事を請け負えるようになっています。

まとめ:財産要件を確実に満たすために

建設業許可の財産要件を確実に満たすための5つの方法をご紹介しました。

  1. 自己資本を500万円以上に増強する
  2. 預金残高証明書で500万円以上の資金調達能力を証明する
  3. 決算対策で財務指標を改善する
  4. 会社の決算期を変更して資産要件を満たす
  5. 資本金増資または資本準備金の積み増しを行う

財産要件は建設業許可の重要な要件の一つです。特に特定建設業許可では厳しい基準が設けられているため、計画的な財務管理が不可欠です。自社の財務状況を正確に把握し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら対策を講じることをお勧めします。

財産要件についてご不明な点や具体的な対策についてのご相談は、エクリ行政書士事務所までお気軽にお問い合わせください。建設業許可取得に向けて、最適な解決策をご提案いたします。

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